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転売業(せどり)等では、妻や母親など、親族の預金口座に売上が入金されていることもあります。

妻名義など、他人名義の口座に売上が入金されている場合

転売業・せどりなどのお仕事、その他のネットビジネス(アフィリエイト)などでたまに見られるのですが、売上(収入)が妻や母親、ときには他人の口座に入金されていることがあります。

これはその業種特有の理由があるようで、万一、利用しているサイトでのアカウントを停止された場合に、親族、家族、他人など他者の名義を有しておけば、そこで取引を継続できるために、他者から口座を借りているようです。口座を借りる行為自体がそもそも問題があるかもしれませんが、その問題はここでは置いておき、税制面から検討をしてみたいと思います。

例えば、夫が事業を営んでいる状態で、妻名義の口座を借りて、妻の名前でせどりやアフィリエイトのサイトに登録して事業を行っていた場合は、いったい夫と妻のどちらが確定申告をしなくてはならないのかという問題に関して説明したいと思います。

※上記業種以外の仲介業やコンサルティング業でも、妻などの親族の口座に売上が入金されているケースは稀にあります。

誰が事業主か-実質所得者課税の原則-

夫婦に説明する税理士のイメージ。

確定申告を誰がすればよいのか、お悩みになるご夫婦も多いのです。

他人の名義の銀行口座を借りて、そこに入金された場合に誰に課税されるのかを考える際には、所得税法の実質所得者課税の原則と言う考え方を把握しておく必要があります。所得税税法第12条では下記のように規定されています。

「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」

つまり、単に名義を使われた側が確定申告などによって課税されるのではなく、実質的に収益(つまり、売上)を享受する人が実質的な所得を稼いだ人ということだとされているのです。

事業から収益を享受する者とは、所得税法第12条の通達12-1(事業から生ずる収益を享受する者の判定)において次のように定義されています。

「事業から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その事業を経営していると認められる者がだれであるかにより判定するものとする。」

ざっくりとはしていますが、経営していると認められるものだということなのですね。預金口座を妻が夫に貸しているが、妻は全く、またはほとんど経営にタッチしていないということになると、実質所得者は夫ということになると言えるでしょう。少なくとも、我々の税理士事務所ではそう判断しています。

なお、所得税法第12条通達12-5(親族間における事業主の判定)においては、「その事業の経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が当該事業の事業主に該当するものと推定する」とされています。結局、誰が実態として事業をやっているのかが重要なのですね。

自分の名義の口座に入金してもらうのが安全ですが。。

転売業・せどりなどのお仕事、その他のネットビジネス(アフィリエイト)、仲介業やコンサルティング業の入金は、できる限りご本人の口座に入金されるようにしましょう。実質的な経営者と、口座の名義人が異なると、やはり税務署から見ても不自然ですし、疑いをかけられてしまう可能性もあるのです。結果的には、税務調査が入りやすくなることも考えられるでしょう。

妻の口座に入金されている状態だが、夫がその所得を確定申告していると、税務署としては「妻は無申告」なのではないか、と疑ってしまうのです。夫の確定申告書の収入金額に、妻名義の口座への入金額が加算されているとは税務署も思わずに、単純に妻が収入があるのに無申告になっているのではないかと思ってしまう危険性があるのです。

夫の売上として認めてもらった事例

税務調査に電話回答する税理士の画像。

実際に夫の収入と認めてもらった事例です。

せどり(転売業)をされているご夫婦で、妻の名義の口座に入金がされているものの、夫が確定申告をしていた事例です。実際に税務調査が入った事例でもあり、以下のような結果となりました。

夫が実質的には事業を行い、奥様はその仕事にはタッチしていませんでしたし、そのお金も奥様には流れていませんでした。ご本人様たちは、奥様の所得となり、そのお金が夫に流れているので贈与税の対象となるのではないかと心配されていたのですが、無事に夫の所得として認めてもらうことができました。

 

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